余市町でおこったこんな話「その209 ニッカウヰスキー余市蒸溜所」
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あけましておめでとうございます。ニッカウヰスキー余市蒸溜所が国指定の重要文化財になります。
今回の指定の理由は、地域の歴史を伝える工場敷地に並ぶ建物が、創業当時の趣きに統一されていること等に歴史的価値が認められるというものでした。
同社創立の2年後の昭和11年2月、大阪の喜田専之輔さんに製作を依頼したブランデー蒸溜用のポットスチル(蒸溜するための銅製の釜)が設置され、ブランデーとウイスキーの製造が開始されました。
蒸溜方法と燃料について、竹鶴さんは「直火に依るべきものか又は蒸気に依るべきものであるかと云ふ問題は工場をとりまく周囲の状態に依って定むべきものと思ひます。スコットランドは石炭を多く産する國でその価格は単に採掘賃金の外(の)運送費用がかゝらない関係から比較的安価で其の上ウヰスキー工場の如きも石炭の供給は極めて豊富であります。」といい、当時の北海道では石炭が安価で手に入ることから、石炭蒸溜を採用しました。
原酒は樽に入れられ、ウイスキー製造工程の最後、熟成(エイジング)によって琥珀色になっていきます。工場敷地の南側、ニッカ会館寄りに、黄色がかった軟石の外壁の第一貯蔵庫があります。建設時は「中島倉庫」と呼ばれる原酒の貯蔵庫で、工場で最初の木骨石造建築として建設されました。
第一貯蔵庫の建設は昭和14年ころと考えられ、構造は切妻造、屋根は鉄板葺で床は土間になっています。妻面にアーチ型の出入口があって、両袖の石柱はきれいな緑色の凝灰岩を立てています。
「こんな話 その196」で樽の製造と貯蔵について紹介しましたが、竹鶴さんは「地面に貯蔵したウヰスキーが最も芳香あるもの」とする考え方を一貫して持ち続けました。
また、ウイスキーづくりには大量の水が必要であり、スコットランドのような降雨量の多い土地でも、場所によっては夏の間、休業する工場があることを学んだ竹鶴さんは、「真のスコッチウヰスキーに彷彿たらしめんとするには、第一に水質次に水量の調査が必要」としています。また日本国内の理想的な場所の条件として、次の五つを挙げます。
第一に水質がよく、その量が豊富であること/第二に原料の大麦を集めることが容易なこと/第三に石炭又は薪の入手が容易なこと/第四に鉄道の便があること/第五に付近に川が流れていて取水が容易なこと。
竹鶴さんは摂津酒造や寿屋の在籍時代にすでに、北海道でウイスキーを作りたいと思い描いていました。 余市川とJR余市駅にはさまれた現在の立地を見ると、ここに蒸溜所を作ったのは地元の勧誘はもちろんだったでしょうが、技術者の目から判断した最良の選択だったのではないかと思います。
余市駅前に降り立つと交差点の向こうに見える、いつもの正門の景色がこれからも変わらずあることと、ニッカさんが町民だけでなく、国民みんなの財産になることを乾杯したいお正月です。
写真:正門棟から見える工場の建物群
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