余市町でおこったこんな話 その117「ローソク岩」
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ローソク岩は豊浜町の沖合約500メートルの海上にそそり立っています。火山活動の結果できあがったハイアロクラスタイト(溶岩が水中で冷やされたもの)から成り、もろい性質を持った岩で、これまで何度か崩落が繰り返されたようです。
明治のローソク岩は町指定文化財の『湯内漁場盛業鳥瞰図』や古文書の絵図にも見ることができ、そこにはかなり太い姿のものが描かれています。昭和の初めまでは今よりももっと太い姿で、古い絵葉書や写真でもそれを見ることができますが、昭和10年代に大きな崩落があり、現在の姿になりました。
この昭和の崩落にまつわるエピソードが残っています。崩落前、地元の漁家が沖合からローソク岩を仰ぎ見たときに、岩には縦に亀裂が走り、中には玉石が引っ掛かっていました。「そのうちにローソク岩が転ぶぞ。」と周囲に伝えた漁家でしたが「神様の岩が倒れるわけがない。」と信じてもらえませんでした。ところが海上を濃い霧が覆い、それが晴れたある日、人々の眼前に現われたのはその漁家の言った通りに縦に割れて細くなってしまったローソク岩でした。
昭和11(1936)年刊行の『神巌蝋燭岩』では、ローソク岩の高さは軍による測量では49メートル、「逓信局」(省?)による測量では47メートルという複数の結果が出ました。現在では44メートルほどと思われます。
同書にはいくつかのローソク岩にまつわる伝説が見えます。
外国の神様が積丹半島をもぎとって、「山靼」方面(ロシアのアムール川下流域か)に持ち去ろうとして暴風と大時化を起こしました。それを防ごうとした「島の神」(地元の神の意か)が、大きな縄を積丹半島にかけて、その端をローソク岩の根元に結びつけて、かろうじて守ったとあります。
また別の伝説では、豊漁の海だったローソク岩付近の海に赤い炎の神が現われて魚を焼き殺してしまうので、アイヌの若者が夢のお告げに従って赤銅の兜と剣で戦って勝利し、その剣がローソク岩になったという話や、アイヌの娘が海藻とりに夢中になって女人禁制のローソク岩に誤まって登ってしまったことが神様の怒りに触れ、魚がまったく採れなくなり、村人がおわびの気持ちを込めてお祈りをしたところ神様の許しが得られ、その証拠にローソク岩の突端が丸く光り、その後は以前の豊漁の海に戻ったというお話などです。
ローソク岩周辺はかつて千石場所といわれたニシン漁場のなかでも特に良好な漁場で、明治30年代にはそこから3つの鰊定置網が海上に伸びていました。そそり立つローソク岩が鰊の豊漁を約束する海の神様だったというのは本当かもしれません。
写真:太かったローソク岩(昭和初期)
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