余市町でおこったこんな話 その81「最後の群来(くき)」

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今から57年前の昭和29(1954)年4月5日月曜日の『北海道新聞』夕刊に「沸きたつ余市浜」と題された大きな記事が掲載されました。群来(くき)とはニシンの大群が産卵のために岸に押し寄せて、放出された白子の色で海が白濁する現象をいいます。余市と小樽市忍路の昭和29年の群来が、北海道最後の群来といわれました。前年の昭和28年は後志管内全体でもわずか24石(1石は約750キログラム、生ニシン換算)の漁獲量しかなく、この年の群来は予想外のものでした。
群来の日は突然訪れたわけではなく、石狩湾沖とシリパ岬沖の漁場に春ニシンの群れと思われる影が魚群探知機に映っていました。この情報を得た町内の刺し網業者の中には漁の準備を進めていた人もいたそうです。
同月28日夜から翌朝にかけて沖合に色濃く姿を見せた魚群は30日に沿岸に押し寄せて、7年ぶりの群来となりました。日中に海が白くなる様子は当時、円山公園の中腹にあった西中学校の窓からも見えたそうで、「沖合より海の色が沿岸に向かって白く変化しながら押し寄せ」る様子を春休み中に登校していた西中生が目撃しました。
その日の様子を伝える道新夕刊のトップ記事は「対比賠償解決へ 五月中旬を目途」とあり、対フィリピンへの戦後補償の前進が伝えられています。また改進党と吉田茂の自由党の保守合同の動きを伝える記事も見えます(造船疑獄により実現せず)。連載小説は山岡荘八による『徳川家康』が106回目、八木義徳による『野性の舞踏』が36回目を迎えています。『徳川家康』は当時、道新ほか国内3紙に連載され、17年間連載された世界最長の小説としてギネスブックに認定されるベストセラー小説になりました。
広告面を見るとコロムビアレコードからベニーグッドマン楽団の45回転ドーナツ盤が発売されています。キクヤ蓄音器店主催のレコードを聴かせるコンサートが札幌商工会議所で開催される旨の告知もあります。また虫下しの飲み薬「デル」の広告には「さあ大変、虫下しならデル、今は効果飛躍の総合剤時代」のキャッチコピーが踊っています。この時期は春の甲子園、第七回選抜高校野球大会が開催中でした。4月4日は準々決勝が行われ、北海道代表の北海高校が熊本工業高校と対戦しましたが、惜しくも3対4で敗れました。
さて「沸きたつ余市浜」の記事は4面の1ページ全部をさいて、「数年ぶりの凄い群来」を伝える文章と4点の大きな写真が配されています。港に陸揚げされたニシンを運ぶ人々(写真)、数の子が網糸にはりついて引く網が重くなっている様子、大漁旗をかかげた船、身欠ニシン製造風景のどの写真からも大漁に沸く浜の空気が伝わってきます。連年続いた凶漁で準備を整えた漁家は少なく、定置網を準備していた家は5、6軒でしたが、それでも1日に2千石以上の水揚げを記録しました。
またニシンは余市川の河口まで押し寄せて「こどもたちが繰りだしてニシンをワシづかみにするほど。」でした。

写真:港に陸揚げされたニシン

写真:港に陸揚げされたニシン

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総合政策部 政策推進課 広報統計係
〒046-8546 北海道余市郡余市町朝日町26番地
電話:0135-21-2117(直通)FAX:0135-21-2144

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